これは、アルバム「極東慰安唱歌」の中に入っている
大きな歌詞カードの片面に、カラーで美しくプリントされたものだ。
正方形の画面に映し出されたものをじっくり見てみよう。
ほどなく小糠雨が降り出しそうな空だ。
地面は黒いが、土ではなく、荒い砂のようだ。
前に降った雨のせいか、しめっているので黒く見える。
所々に、クルマのタイヤの痕が見える。
遠くには海浜近くにあるコンビナートのような工場群が、
うすくけぶっている。
ここは埋立地だろうか。
画面の真ん中には、戸川純が立っており、
カメラのある位置の左下方の、なにかを見つめている。
戸川は短い黒い髪をしており、
外字新聞のような模様がプリントされた服を着ている。
表情はない。
戸川は裸足で、黒い砂を踏んでいる。
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この写真を見ていると、自分もこの埋立地の砂の上に立っている
ような感覚にとらわれる。
手を伸ばせば、戸川に届きそうだ。
この写真こそ、このミニアルバムが描いた世界、
東アジアのこの国に住む我らのための慰安、そのものだ。
この写真を見るためだけに、
この45回転12インチLPをオークションで買う価値があるよ。
(残念だがCD版の歌詞カードにはこの写真は収められていない。)
もちろん、曲も素晴らしい。
(この写真は植田正治が71歳の時に撮ったものだ)