2011/03/20

ルミニャウイ世界遺産

かつて南米の小国アメリゴ共和国の国旗は
三色旗(左から青緑・白・臙脂)であった。
青緑は太平洋、白は国民、臙脂はアンデス山脈を表していた。

1974年に国家社会主義的独裁者であったメルキリウス統領が死去し、
バスコンセロスによる長期政権が樹立されたが、
その後、タカハシ大統領に至る約20年の間、
次第に先住民の社会的要求が強まり、国民=白(つまりスペイン系)
という象徴的構造に矛盾が生じてきた。

そこで、1984年、バスコンセロスは白地部分に、
先住民文化の象徴である「ルミニャウイ古代遺跡」の
図像をはめ込むことにした。

さて、ルミニャウイとはインカ帝国南端の空中都市遺跡である。
標高4300mに位置し、大規模な都市遺構、自給自足できる農地、
インカ型のピラミッドなど祭祀遺構を有している。
およそ1万人の生活が可能であったと推測される都市であった。

16世紀のインカ帝国滅亡以来、まったく忘れ去られていたが、
1960年代後半に、米国ナショナルジオグラフィック協会の
探索によって発見された。

人間による配石持ち去り等の破壊が進んでいなかったため、
当時の貴重な居住地や農耕に関わる遺構が保存されている。

バスコンセロス政権は、先住民懐柔と救恤のため、
この遺跡をアメリゴ唯一のユネスコ世界遺産として申請した。

実際に世界遺産に指定されたのは1989年のことであった。

(「オクシダントホテルの対話」の項を参照)