と見せかけて「ふつうにんげん」の皆さんも読んでください。
熱く語っていますが、引かないで読んでみて欲しい。
惡の華 第54話に衝撃を受けて、深く感動した。これほど創作作品で感動したのは、あらゆるジャンルでここ10年で最大だ。
これまでの流れも含めて、筆者(オレ)の覚えとして書いておこう。
(ネタバレありなのでこっから先は読みたくない人は読まないでください。)
【佐伯さん】
佐伯さんは人間として普通の様々な欲を、素敵な容姿でカバーした、やさしい人だ。そんな普通の人である佐伯さんが、普通の人でない仲村さんの無垢な心のことを理解することは不可能だったろう。
(無垢という表現が正しいかはわかりません)
これは、たぶん春日君の母親が、春日君のことを理解できなかったのと同じなのであろう。
だから仲村さんにとっては佐伯さんの中身は「蠅よりただれてる」し、「おまえなんかに死んでもわかってたまるか」だったというわけだ。佐伯さんはなすべきことをしようとして一線を越えてしまったが、普通の人の範疇ですよね。
【春日くんと仲村さん】
春日くんは夏祭りの前日までに心身ともひどく傷つきながらも、仲村さんの無垢な心と深い苦悩を理解したが、佐伯さんは理解しようとしなかった。
仲村さんは、「ふつうにんげん」は決して仲村さんを理解できないと思い、嫌悪していた。それが「まんじゅうどもと!」という言葉に端的に表れてると思う。
春日くんは、仲村さんの苦悩を理解はしたけど、自分と同じ無垢な心の持ち主ではなかった。仲村さんは、春日くんが律儀につきあってくれたのを知っていた。彼らは相互に依存していたということだろう。
そんな春日くんのことを、仲村さんは本当は好きになっていたのではないか。
(だが、それは佐伯さん的な意味での「好き」ではない)
でなければ春日邸を襲撃してまで、春日くんを助けにくるだろうか?
だから仲村さんは心中の瀬戸際に「一人で行」こうとし、春日くんを夏祭りの櫓から突き落としたということだろうか。
だから、改めてなぜ櫓から突き落としたのかという問いには、「さあ わすれた」というはぐらかした回答しかできなかったということだろう。
都合の悪いことをはぐらかしたくなる気持ちはわかる。(仲村さんは「突き落とした理由は春日くんのことが好きだったからだ」とは素直にいえない人だろ?)
にしても54話の白目が気になる。この白目の意味についてはもっとよく考える必要がある。
(ネット上では、白目がルドンの悪の華に似ているという議論があります)
【常磐さん】
「ふつうにんげん」であるはずの常磐さんなんだが、第53話では「中途半端にしないでよ」などと普通なやりとりが見られる。まあ、「ふつうにんげん」としては当然だろう。これを見て、よくある恋愛ドラマっぽい展開になるな、、、と思った人もいるだろう。
そう、、、常磐さんは、仲村さんとの関係を断ち切る現場に居合わせたい、という思いで、外川までやってきたのだった。だから中途半端にしないために、春日くんに代わって、店の奥の仲村さんを呼び出したのだ。、、、ここまではよくある話だろ。
だが、常磐さんは、第54話で二人の交感の場面を実際に目の当たりにし、激しく動揺することになる。
ここからが素晴らしいのだが、
常磐さんは、交感の場面で、仲村さんの心と春日くんの心の両方を、そして二人の繋がりがあまりにも深いのを、一瞬で正確に知って衝撃を受け、二人の関係を終わらせるという当初の目的を捨ててしまおうとまでする。
それは、その直後の常磐さんから仲村さんへの語りかけで明らかだ。
これは常磐さんの感受性の力のためであり、その意味では常磐さんは「ふつうにんげん」ではなかった。常磐さんの行動は佐伯さん的な価値観では測れないものですね。
そうした深い感受性をもった常磐さんの言葉は、二人の心に響いただろう。
その言葉と、その後で春日くんがとったある行動によって、二人の魂はあの浜辺である程度は救われた。
そして、たぶん常磐さんの魂も、、、
(佐伯さんや木下さんのように救われない人はどうするのか)
【最後の言葉】
最後の仲村さんの言葉は、春日くんへの、これからは「ふつうにんげん」として生きろという、優しさを込めた決別の言葉だったろう。
仲村さんはあの白目と、春日くんにグーパンする直前の目からみて、これからもたぶん「ふつうにんげん」ではない覚悟なのかもしれない。
でも、たぶん外見上は「ふつうにんげん」として、外川でお母さんと穏やかに暮らしていくのだろう。これは筆者(オレ)の感情移入した願望ですが。
(仲村さんからドスのきいた声で「ふざけるな」と言われるかもしれない)
【世界の色】
佐伯さんはこの世界は灰色だと言っていた。でも、再会した後の春日くん、仲村さん、そして常磐さんにとってもう世界は灰色ではない。
3人の心には、浜辺の夕暮れのような「金色」の世界が広がっていると思いたい
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