まず、最初はこれだろう。
実家の押し入れに眠っていたLP、戸川純の「玉姫様」。
まだ聴いたことのない人は、
先入観を捨てて、一度、無心に聞いてみてほしい。
吟味された詩の世界もさることながら、
録音された歌声のすべては
彼女の緻密な計算に基づく演技、というか創造だ、
ということが分かるはずだ。
それを実現するのが、あの
びっくり歌唱法(声が無限に変化する)なのだ。
そんなことができるのはたぶん、天才の仕事ではないか。
ヘンな歌い方、としか感ずることが出来ないなら、
君の感受性こそつまらないだろう。
まあ、このアルバムで一番好きなのは
「憂悶の戯画」という短い曲なのだが、詩の世界が素晴らしい。
童心、西洋、身の回りの小さな世界といったものが
渾然一体となったそれは、この詩でしか表現できない。
「隣の印度人」や「電車でGO」(このアルバムではないが)など、
ハルメンズの曲を歌っているのが多いが、
まさに戸川純のために生まれた曲といってもいい。
それを自分の独自・独特・唯一無二の解釈で、完全にものにしているの
だ。
↓ サエキけんぞうによる評
http://allabout.co.jp/entertainment/technopop/closeup/CU20080501A/
index5.htm
「諦念プシガンガ」の、絶望を通り越して
なにもない青空にまで突き抜けてしまった世界や、
「蛹化の女」を「むしのおんな」と読ませる
そのセンスが素晴らしい。
まあ、つまり全曲素晴らしいってことだ。
思春期に聞いたら、人生が確実に変わる1枚である。